
枕が睡眠に与える影響とは
2023年11月17日
しかし、枕は何のために存在しているか、ご存じでしょうか? いざ質問をされると、明確な答えを持っている人は少ないと思います。
枕は睡眠中に頭をささえるためであり、睡眠姿勢を正しく維持することで、理想的な呼吸ができ、リラックスができ、睡眠の質を維持することにもつながります。逆に、自分の体型や寝心地の好み等の影響で、枕が合わない場合は、首回りの筋肉が緊張する事に繋がり、睡眠の質の低下やいびきが発生したり、首・肩のコリや痛みに繋がるなど、睡眠だけでなく日常の生活にも影響を及ぼすことがあります。
そんな大事な存在の枕ですが、存在が当たり前すぎて、枕について深く考える事はないと思います。今回はぜひ枕と睡眠の関係について話をしたいと思います。

白濱 龍太郎 氏
日本睡眠学会専門医、医療法人RESM理事長。福井大学医学部 客員准教授。ハーバード大学公衆衛生大学院にて睡眠に関する先端の研究に従事。東京オリンピックでは選手のサポートを行うなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い睡眠のエキスパート。
- 目次
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1. 枕の種類と特徴
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2. 枕が合わないと出る症状
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3. 自分に合った枕とは
枕の種類と特徴

まずは枕の素材の種類ですが、主に以下のような種類があります
▶︎ そばがら
昔から多くに人に愛されてきたそばがら枕ですが、特徴はそばの実を取った後に残る殻を活用した事と、それによって通気性に優れていることが挙げられるでしょう。そして素材ならではの吸湿性もあるので、快適な睡眠が期待できます。
ただその素材ならではの課題かもしれませんが、湿気やカビにより劣化が比較的早く、しかも虫がわくこともあるので注意が必要です。
またそばの実を使っていますので、アレルギーにも気を付けておきたい点があります。
▶︎ ウレタン
特に低反発素材は頭にフィットし、もちもちとして沈み込むような寝心地が好きな方は多いと思います。フィット感も期待できるのが特徴です。
しかしながら、へたりやすく耐久年数が比較的短い点がデメリットかもしれません。また、洗えないため、衛生面、特にハウスダスト等によるアレルギーに不安を抱える人にとっては大きなデメリットになるかもしれません。
ただ、最近はそのデメリットを改善したウレタン出てきていますので一概には言えません。
▶︎ ポリエステル
ポリエステル素材の最大のメリットは丸洗いできる点です。ほかの素材に比べ乾燥時間も含め洗える点を重要視するならチョイスのひとつに入るでしょう。
▶︎ パイプ
ストロー枕と表現されることもある素材ですが、この素材はプラスチック素材のためダニが付きにくい点がメリットです。
また通気性にも優れているため、汗をかきやすい方や蒸し暑い季節には適していると思います。
ただ、吸水性には優れていないため、枕自体が寝てる間にべたべたする等の睡眠を阻害する不快感に繋がるリスクはあると考えます。
▶︎ ビーズ
ビーズ素材の特徴は頭の形に素材側が形を合わせてくれることでしょう。それによって自分に合った高さで睡眠がとれ、スムーズな入眠に繋がる可能性があります。
▶︎ ファイバー
ファイバーの素材の特徴は優れた弾力性と通気性ではないでしょうか。
特に90%以上が空気というファイバー製の枕は頭の熱を逃がし適切な深部体温の変化を促進してくれるため、入眠をスムーズにしてくれると思います。
また水で簡単に洗える点、そして使い続けてファイバーがへたった場合でも50度~60度のお湯をかけることでへたりが戻る点もメリットだと言えます。
枕が合わないと出る症状

自分に合わない枕を使い続ける事で起こる睡眠の課題は以下の通りです。
■首の緊張が続き無理な寝姿勢を継続するため起こる課題
・頭痛・肩こり
・寝違えを起こす
・腰痛・手足のしびれ
・中途覚醒(睡眠の途中で目が覚める)
■寝姿勢が良くない事で起こる課題
・いびきが多くなる
・睡眠時無呼吸症候群のリスクになる
また枕が直接的な要因ではありませんが、自分に合わない枕を使い続け、いびきや無呼吸が続く事で、命に関わるような心臓疾患や糖病、高血圧が起こることもあります。
また、一緒に生活をしているパートナーの睡眠の質までも低下させてしまうこともあります。
自分に合った枕とは

もちろん寝心地や人それぞれ好みは違うので一概には言えませんが、枕に頭を乗せたとき、首の骨から肩にかけてS字カーブを自然に維持できる形状のものが理想的と考えられます。
寝ているときも、立っているときと同じ姿勢になることが理想です。
枕の素材は好みを優先して構いませんが、低反発枕が合わない人は頭が沈み込んでしまうようなやわらかいものよりも、ある程度弾力のあるものがおすすめです。寝返りを打った時に頭が落ちないように、横幅は頭3つ分くらいあるものが理想です。
白濱龍太郎先生によるまとめ
自分の身体に合わない寝具を使い続けていたり、寝具がぐっすり眠るのを妨げるような環境になっていたりすると、いくら毎日の行動を変えて睡眠にとって良い習慣を身につけても、いつまで経っても睡眠の質は高まりません。
今の環境が最適な寝具や寝室になっていないと感じていたり、その可能性があると思っている方は、ぜひ速やかに理想的な寝具選び、寝室づくりの検討をしてみて下さい。
そうはいってもベッドを買い替えたり、部屋の広さを変える事はお金も時間もかかる事です。
なので、まずは比較的簡単に導入できる枕の買い替えや、今のベッドを変えなくても上に敷くだけで環境を変えることができるオーバーレイマットレスを取り入れることから始めてはどうでしょうか。