寝返りの重要性とは

2023年7月28日

寝返りには、睡眠中の姿勢を変えることによって、身体にかかる負担を軽減する役割があります。 そのため、質の高い睡眠をとるうえでなくてはならない要素である“寝返り”についてご紹介します。
医学博士 睡眠学研究者
白濱 龍太郎 氏
<PROFILE>
日本睡眠学会専門医、医療法人RESM理事長。福井大学医学部 客員准教授。ハーバード大学公衆衛生大学院にて睡眠に関する先端の研究に従事。東京オリンピックでは選手のサポートを行うなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い睡眠のエキスパート。

寝返りとは何か

「寝返り」という行動は睡眠時に誰しもが行う行動ですが、自分がどんな寝返りをいつどれぐらいの頻度で行っているのか、何のために行っているのかを知っている人はほぼいないのではないでしょうか?

人は寝ている間に20回前後ほど寝返りをすると言われていますが、それは寝具環境や体形など様々な要因によって変わると考えられます。

朝起きた時にすっきりしない人や腰が痛いなど、睡眠の悩みとして挙げられるポイントが、寝返りと関係がある場合もあります。

そもそも寝返りは何のために行っているのか、寝返りはしたほうがいいのか、少ない方がいいのかなど、今回は寝返りにフォーカスを当てたいと思います。

寝返りの目的とは

そもそも寝返りとは何のために行っているのでしょうか?
厚労省のe-ヘルスネットにはこのような記載があります。

“寝返りは、睡眠中に同じ体の部位が圧迫され続けることで、その部位の血液循環が滞ることを防ぎ、体の負担を和らげるために生理的におこなわれる体の動きなのです。そのほか寝返りには体温を調節する・寝床内の温度を保つ・熱や水分の発散を調節するといったはたらきがあります。”
参考:e-ヘルスネット >


人の身体とはこの様にそれぞれの部位の重さバランスが存在します。この寝姿勢とずっと続けることで、特に腰や肩に大きな負担がかかり続ける事になります。
身体の一部に睡眠中の約7時間、継続して負担がかかり続ける事で、睡眠に様々なネガティブな影響を与えてしまう事は容易に想像できますよね。

つまり寝返りは快適な睡眠を続け、睡眠本来の目的である脳と体の疲労回復のためには欠かせない行動だということが分かります。もちろん朝起きた時の腰や肩の痛みを回避するためにも重要ですね。

寝返りは睡眠にとって非常に重要な行動だということは分かりました。でも寝返りを意識的にする事は出来ないですよね。意識的にしている場合、それはもう目が覚めてしまっている状態で、よくはありません。
では寝返りが出来ていない場合のデメリットや理想的な寝返りをするためにどんな事を意識すればよいのか、ひとつずつ説明をしていきたいと思います。

寝返りが出来ないことの睡眠の質への影響とは

まず寝返りの目的の説明で記載した通り、寝返りが出来ていない場合、このようなデメリットが発生すると考えられます。

・肩や腰が痛い
・疲れが十分に取れない
・睡眠中に暑さや蒸れで目が覚める

ある調査によると、入眠後2時間が経った段階の睡眠が安定し始めたタイミングからは寝返りの回数が多い方が被験者の睡眠による疲れが取れたと回答する傾向が高かったという結果が出ています。
参考:疲労回復における寝返りの効果 >

また、無理な寝返りによっても睡眠の質を悪くする可能性が考えられます。こちらも上記と同じく、無理な寝返りとすることで目が覚めてしまういわゆる“中途覚醒”や、身体の上半身と下半身がうまく連動しない寝返りを続けることで、身体の腰に負担がかかり腰を痛めてしまうことにもつながると考えられます。

寝返りがしやすい環境とは

では無意識の中で行う寝返りをなるべくスムーズに行うためにはどうしたらいいのでしょうか。
ひとつできることとしては、自分に合った寝具環境やマットレスを見つけることです。

就寝時の理想は自然でキレイに立っている時と同じような姿勢と言われています。そのためマットレスはご自身の体形にもよりますが背骨の曲がり幅が2~3センチ程度に保てる比較的高反発のものが良いと考えます。
適度な固さのマットレスであれば体に無理な力をかけることなく、自然な寝返りが期待でき、中途覚醒等も起こらないと考えられます。

マットレスが柔らかすぎる場合、腰や胸・肩が沈み込みてしまい背骨のS字カーブの曲がり幅が大きくなってしまうことが考えられます。逆に硬すぎると接触する部分に痛みを感じたり、血流が妨げられる事で入眠に悪い影響を生んでしまう可能性があります。

白濱龍太郎先生によるまとめ

睡眠に関する悩みのランキングを良く見かけますが、悩みの上位に常に上がるのが「朝目覚めた時に疲れが残っている、すっきりしない、ダルい」等、睡眠の質が悪い事で翌日に疲れを残してしまっている「睡眠疲労」ともいえる事象ではないかと思います。

もちろん質の良い睡眠は十分な睡眠時間と日中にどのような行動をするかも大事です。しかし同時に寝返りのしやすい環境も非常に重要なポイントのひとつだと思います。

事実として寝返りと睡眠の質の関係性については、様々な論文発表がなされており、科学的にも理想的な寝返りは睡眠の質の向上に関係している証明されています。
ぜひ一度ご自身のマットレスや寝具環境が寝返りをしやすい状態かどうか、確認してみてもいいかもしれません。それによって睡眠の質が大きく変わる可能性もあります。

ちなみにですが、寝返りと睡眠の質の関係性については、私がアドバイザー/共同開発を行っているスリープエンリッチのマットレスでも研究を行っております。
私の睡眠ラボで脳波等の検査(PSG検査やOSA睡眠調査票など)手法を使い、寝返りのしやすいマットレスが睡眠の質にどのようなポジティブな影響を与えることができたのかを可視化していきたいと思います。結果は別のコラムで配信できればと思います。

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