睡眠の質を上げるための「昼の習慣」とは

2023年7月20日

みなさん、睡眠の質を上げるには夜にどう過ごすのかが重要だと思っていませんか?
実は日中の行動や食事によっても大きく睡眠の質を変えることができるのです。今回は前回に続き「昼の習慣」について紹介したいと思います。
医学博士 睡眠学研究者
白濱 龍太郎 氏
<PROFILE>
日本睡眠学会専門医、医療法人RESM理事長。福井大学医学部 客員准教授。ハーバード大学公衆衛生大学院にて睡眠に関する先端の研究に従事。東京オリンピックでは選手のサポートを行うなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い睡眠のエキスパート。

昼に眠くなる理由とは

昼に眠くなる理由のひとつは食事後に上がる血糖値を下げるインスリンの分泌が影響します。
人はインスリンが分泌されると自然と眠くなるのですが、満腹状態の後は大量に分泌されるため強い眠気に襲われます。

そしてもう1つ原因があります。
それは「睡眠圧力」です。朝の習慣のコラムで記載しましたが人間には体内時計が備わっています。
しかしそれとは別に「睡眠圧力」という眠気の強弱のリズムも同時に働いているのはご存じでしょうか。睡眠圧力の波が最初にもっとも強くなり眠くなる時間は起床時間から6時間~7時間後、つまり起きる時間にもよりますが12時~14時の時間帯になります。

次に眠気が来るのが深夜の1時~2時くらいで、1日の周期のうち2回ピークがくると言われています。つまり、昼間に眠くなるのは至極当然で脳のパフォーマンスも大きく低下します。睡眠不足の状態の場合では、もともと眠くなる状態にあるので、余計に眠くなりパフォーマンスの低下に繋がることが想像できます。

昼の習慣①ランチメニューを見直す

お昼の時間帯に眠くなる要因について先述した通り、昼に眠くなる理由は様々あります。
その中でランチに何を食べるかでその眠気をコントロールし、本来眠るべき夜にしっかりと眠って、睡眠の質を上げることに繋がると思います。

糖質が多い食事(例:炭水化物)を満腹になるまで食すことはインスリンの分泌を大量に行う事に繋がります。
そして血糖値が上がったままの状態では生活習慣病に繋がる恐れもあるので睡眠の質を上げるという観点とは別の意味で、注意が必要となります。

昼食は炭水化物(糖質)を控えめにし、タンパク質や野菜等の食物繊維を意識して食べるとそれほど強い眠気に襲われることはないと思います。
とは言え、炭水化物が好きな方も多いと思いますし、炭水化物自体は健康的な筋肉を作る上で必要な要素でもありますので大盛等はやめ、少な目や普通の量をゆっくり食べることが良いと思います。

また食べる内容も睡眠の質を上げるために気を付けたい事があります。
それは、鍋や熱い汁もの、香辛料を大量に使用した辛い料理です。熱さや刺激で頭が冴えたり、満足度が高い食事になるかもしれませんが、昼間に深部体温を必要以上にあげる事で、体内のリズムが狂い夜に睡眠の質を上げることが出来なくなる可能性があります。

睡眠の質を上げるためにも、身体のリズムを乱さないようにしたいですね。

昼の習慣②テレワークは夜に仕事をしない

テレワークになると業務内容によっては、仕事を終わらせる区切りがつけづらく夜遅くまでPCに向かって仕事をしてしまう事がありますよね。
また人によっては家庭の用事等の状況によっては自分の時間を夜確保して時間を柔軟に使い仕事をする人もいると思います。でもそれでは夜勤をしているようなものです。

出勤日とテレワークを複合的に設けている会社が昨今増えていますが、そういった複雑な勤務形態の中では生活のリズムを乱す原因に直結するので注意が必要です。何度も記載をしていますが、24時間のリズムが崩れることは睡眠の質を上げる上で大きな壁となります。

また夜遅くまでブルーライトを浴びる事もメラトニンの分泌を減らすことに繋がり、結果として睡眠に悪影響を及ぼします。そして、もしテレワークを行うときに日中に時間を取りづらい場合、夜よりも朝に仕事をする時間を割く方がまだよいと思います。

昼の習慣③コーヒーを活用した正しい昼寝で脳をリフレッシュ

日中の集中力やパフォーマンスの向上に効果的なのが実は20分程度の短い昼寝です。意外かもしれませんが、コーヒーを飲んでからの昼寝が実はおすすめなのです。
コーヒーの香りには副交感神経を優位にし、気持ちをリラックスさせる効果があります。リラックスすることでスムーズな入眠が期待できるのです。
もちろんコーヒーに含まれるカフェインで交感神経を優位にし、眠気がなくなることも事実ですが、カフェインは覚醒効果が出るまでに20分~30分を必要とするので問題ありません。

そしてこのタイムラグをうまく活用し昼寝をすることで、コーヒーの香りによりリラックスし昼寝で脳をリフレッシュさせ、カフェインの覚醒効果で昼寝から覚めた後に覚醒効果も併せてすっきりと頭が冴えた状態で仕事に臨めるということです。

昼寝の時間は午後一時がベストです。遅くても三時までに済ませて下さい。これよりも遅い昼寝は夜の熟睡の妨げになってしまい、結果として本来目指したい睡眠の質を上げる事に繋がらなくなってしまいます。

白濱龍太郎先生によるまとめ

日中は人が行動している時間帯なので、自分自身が眠かったり疲れが残っていたり、睡眠の質がいいのか悪いのか、を一番感じてもらえる時間帯なのではないかと思います。
だからこそ、その時間帯にどんな行動をすることが、本質的な睡眠の質を上げる事に繋がるのかを理解し意識をすることがとても重要だと考えています。

どこでもインターネットに繋がったり、様々な情報が24時間関係なく入ってくる時代だからこそ、24時間のリズムを維持する意識と行動が結果自分の仕事上のパフォーマンスや毎日のメンタル面や心の豊かさにもつながってくるのではないかと思います。

今回記載はしていませんが、朝から昼にかけて簡単な有酸素運動(ウォーキングや階段を使った踏み台昇降)を10分程度行うことも睡眠の質を上げる事につながると言われています。毎日自分がどんな過ごし方をしているか、ぜひ一度振り返ってみてください。
それだけでもよりよい生活を行う上で、良いきっかけにもなるのではないでしょうか。

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