睡眠の質を上げるための「朝の習慣」とは

2023年7月13日

みなさん、睡眠の質を上げるには夜にどう過ごすのかが重要だと思っていませんか?
実は日中の行動や食事によっても大きく睡眠の質を変えることができるのです。今回は「朝の習慣」について紹介したいと思います。
医学博士 睡眠学研究者
白濱 龍太郎 氏
<PROFILE>
日本睡眠学会専門医、医療法人RESM理事長。福井大学医学部 客員准教授。ハーバード大学公衆衛生大学院にて睡眠に関する先端の研究に従事。東京オリンピックでは選手のサポートを行うなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い睡眠のエキスパート。

朝の習慣が睡眠の質を上げる理由とは

私たち人間だけでなく、様々な生物には生まれながらに「体内時計」があります。

これは「この時間帯にはこういうことをする、という本能的に体が欲する行動」の事です。例えば、夜眠くなり、朝目が覚める事等もそれにあたります。この約24時間周期リズムは、サーカディアンリズムとも呼ばれます。

そして夜眠くなる、朝目が覚めるという行動には、自律神経の安定をうながすセロトニンという神経伝達物質と、脳の松果体から分泌されるメラトニンという睡眠ホルモンが大きくかかわってきます。それぞれが体内で生み出される「タイミング」が非常に重要で、セロトニンの分泌は太陽光を感じることで増加し、夜になると酵素の働きによって自然と睡眠を促すホルモンであるメラトニンに変化します。この働きで朝から一定の時間が経過すると、自然と眠気が訪れるのです。

朝の習慣①朝起きたら太陽の光をしっかり浴びる

私たちの身体では自律神経が働いています。

その自律神経は、日中活動をする「交感神経」と夜リラックスさせ体を休ませる「副交感神経」の切り替えがなされます。睡眠から目覚めた直後は「副交感神経」が優位な状態です。その状態から朝から活動的に行動できる様切り替えるためには、太陽の光をしっかりと浴びることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし眠気がなくなり、交換神経が優位な状態へ移行していくのです。

この切り替えは目覚まし時計の音では切り替えられません。太陽の光によって起きるため、日当たりのいい環境であればカーテンを開けたまた就寝することも、目覚めを良くする秘訣と考えられます。
もちろんカーテンを閉めて就寝し、朝起きたときにまず初めにカーテンを開けて部屋の照明もオンにすることで、交感神経を優位にすることができ朝すっきりと目覚めることに繋がるでしょう。

逆に、朝のうちに太陽を浴びることができないと、体内時計がずれていき夜に副交感神経を優位にすることが出来ず、眠くなる時間が遅くなることが考えられます。

朝の習慣②柑橘系の香りで頭を活性化させる

柑橘系の香りは交感神経を刺激し、目覚めを促進してくれます。

例えばレモンやグレープフルーツの香りはみずみずしい香りや柑橘系の香り以外だとペパーミントやローズマリーのような香りが特におすすめです。朝シャワーを浴びる場合は、ペパーミント等の香りのシャンプー等で覚醒を促すことも良いかもしれません。朝食で食べるのもいいですし、アロマやスプレー等で朝に香りを楽しむことで目覚めを良くしてくれます。

この香りをかぐ事も太陽の光と同じく、朝しっかりと交感神経を優位に、夜に副交感神経を優位にする正しい体内時計を維持する事のために重要です。
ちなみに、夜に柑橘系の香りをかぐことは逆効果です。交感神経を優位にしてしまいリラックスすることが出来なくなるので、柑橘系の香りは朝、と覚えて頂けたらと思います。

朝の習慣③熟睡のための朝食は「和食」と「ヨーグルト」

朝食時にしっかりと摂りたい栄養素は「トリプトファン」という栄養素を含む食材です。

この「トリプトファン」は必須アミノ酸のひとつで、体内に入ると自律神経の動きを活性化させ心のバランスを整える機能を持つ“幸せホルモン”である「セロトニン」に変わります。そしてその「セロトニン」は、夜にかけて「メラトニン」に変化をします。この働きにより朝から一定の時間の経過後、夜に眠気が訪れる周期を生み出すことが出来るのです。

「トリプトファン」を多く含んでいる例が大豆製品やチーズ・ヨーグルト等の乳製品、卵やナッツ類です。例えば大豆を多く含んでいるメニューといえば、みそ汁や納豆が浮かびます。セロトニンの合成に欠かせないビタミンB6を含んでいる鮭と併せて、おいしい和食を朝食べて頂ければと思います。

忙しいビジネスパーソンは朝ごはんを作る時間がない時もあると思います。そんな時にはインスタントでもよいので味噌汁だけでも飲むようにしてください。朝食を少しでもしっかりと摂る事には、体内時計を調整する効果もあるので、意識して朝食を摂る事をおすすめします。

白濱龍太郎先生によるまとめ

睡眠の質を向上させるためには、朝や昼にどのような行動ができるかは、とても大切な要素です。
コラムに記載したように人を含めた生物全般は約24時間周期のリズムで生きており、朝目が覚め、夜眠くなるという普遍的な周期を軸に生きています。だからこそそのリズムを維持するために何をしたらよいかを知っている事は、睡眠の質を上げることに直結するのです。

今回紹介した朝の習慣はどれも自分の生活に取り入れる事はさほど難しくないと思います。睡眠に限らず朝活動的に行動することがとても良い事だと言われています。ぜひこの機会に、一度騙されたと思ってご自身の朝の習慣に取り入れてみて下さい。結果朝の目覚めや日中のパフォーマンスが良くなる事が期待できるでしょう。

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