
眠れない夜に読んでほしい。眠りやすくする方法とNG行動
2023年3月21日
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白濱 龍太郎 氏
日本睡眠学会専門医、医療法人RESM理事長。福井大学医学部 客員准教授。ハーバード大学公衆衛生大学院にて睡眠に関する先端の研究に従事。東京オリンピックでは選手のサポートを行うなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い睡眠のエキスパート。
- 目次
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1. 夜眠れない原因
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3. 眠りやすくするための方法
眠いのに眠れない原因

▶︎ ストレス
心理的要因は、本来夜になると優位となるはずの副交感神経を抑制させます。その結果なかなか寝付けなくなり、睡眠を妨げます。
▶︎ 痛み、かゆみ
身体に違和感があるとその不快感が気になり、眠りにつけなくなります。
▶︎ 加齢
齢を重ねることで、高血圧、糖尿病といった生活習慣病をはじめ、さまざま基礎疾患を合併するようになり、それが身体的且つ心理的ストレスにつながります。また高齢者ほど、眠れないことへの不安、焦りが非常に強い傾向があります。
▶︎ よくうつ、うつ
うつ病の初期症状として不眠は出現しやすく、その背景には心理的要因、ストレスが大きく関係しています。ストレスが長く続くことで、普段以上に強い悲しみや気分の落ち込みがあったり、意欲や喜びの低下が現れるなどの症状もでてきます。
▶︎ 食べ物、アルコール
脂っこいもの、刺激物(辛いもの)、食べ過ぎやアルコールの過剰摂取は、胃や腸などの消化器系の中に飲食物の滞りを起こし、熱が生じます。その熱は体内熱となり、上昇する性質があるため、脳や意識や精神まで影響を及ぼし眠れない原因となります。
▶︎ 時差ぼけ、交代勤務、夜勤
時間が不規則な人は、眠る時間も不規則になり、睡眠時間が短くなる傾向があります。その結果、生活習慣のリズムが乱れ、体内時計にズレが生じ、スムーズに眠れなくなります。
▶︎ 室内環境
照明の明るさやクーラーによる冷え過ぎにより入眠しづらくなります。照度が高い光をたくさん浴びていると、眠りを促進するメラトニンの分泌が抑制され、入眠が妨げられます。
▶︎ 睡眠環境
自分に合う高さの枕を使っていない事で理想の寝姿勢がとれていなかったり、
マットレスの硬さが合わない等、睡眠時の寝具が体にフィットしていない事で寝心地が悪くなり睡眠の質の低下や最悪の場合、眠れない原因につながります。
▶︎ ブルーライトの刺激
眠る間際までパソコンやスマホなどを見ていると、ブルーライトの刺激で脳が覚醒され、寝つきがますます悪くなります。
▶︎ 過労
体が疲れて休みたいのに脳が興奮して寝静まることができない状態となります。心や体の健康バランスを保つ栄養物質を消耗、不足していることになります。このような状態では一向に寝付くことができません。
▶︎ 女性ホルモンバランス
生理中、女性ホルモンの1つ“プロゲステロン”の分泌が増加することで、体温が上昇し、寝つきにくくなることがあります。また閉経前後の更年期をむかえると、女性ホルモン全体の分泌が低下、自律神経のバランスが乱れ、不眠になる可能性があります。
眠りにくくしてしまうNG行動

良かれと思って実践していることの中には、逆に眠りにくくしてしまう行動があります。今回は特に寝る前にやりがちな4つのNG行動について説明します。
▶︎ 靴下をはいて寝る
手足の冷えをおさえることでよい睡眠につながるイメージがありますが、逆効果です。寝つきは良くなるかもしれませんが、そのあと、体内の熱がうまく放出されずい、良い眠りからは遠ざかってしまいます。湯たんぽや電気毛布も同様です。
ウトウトしてきたら、靴下は脱ぐ、湯たんぽや電気毛布は外に出すことが必要です。
▶︎ Tシャツとジャージで寝る
Tシャツやジャージでは動きやすく制約の少ない衣服として重宝しますが、吸湿性、伸縮性、保温性に優れた他の衣類を選択し、入眠前に着替えることで、より快適になると同時に、これから睡眠に入りますという儀式にもなり、睡眠のルーチンとして良い習慣になります。
▶︎ 寝る直前の歯磨き
「寝る前に歯を磨く」という当たり前の行為が実はNG行動です。歯茎が刺激されるとメラトニンの分泌量が減ると言われています。眠りやすくするためにはメラトニンの働きは不可欠です。歯磨きの推奨時間は就寝1時間前です。
▶︎ 寝酒
副交感神経が優位なリラックス状態を保つために良いと思われる方も多くいます。確かに身体はリラックスして眠りやすくなりますが、利尿作用や、アルコール分解のために交換神経が優位になり、身体も脳も休息しづらくなります。メリットよりもデメリットの方が多いので、寝る前の「ちょっと一杯」は避けるべきです。
眠りやすくする方法

眠れない人が眠りにつきやすくするためのお薦めの方法を厳選しました。今回は眠りの時間の数時間前に焦点をあてて紹介します。
▶︎ 入浴
人の身体は深部体温が下がると眠気が起こる特徴を持っています。つまり「就寝時刻にあわせて深部体温を意図的に下げるように調整すれば眠りやすくなる」ということです。「この時間に寝たい」と思っている1時間半から2時間前に入浴することをお薦めします。湯船につかって身体をしっかり温め深部体温をピークに引き上げ、お風呂からあがったあとから熱が下がっていく過程で眠気を誘うようコントロールしていきます。ぬるめのお湯に最低10分は入浴してください。入浴時間が長くできない場合、発泡性の入浴剤を入れることにより、効率よく深部体温を上昇させることができます。
▶︎ 入眠スイッチの習慣化
自分自身を就寝に促す「入眠スイッチ」なるものを習慣にすることで「さあ、寝るぞ!」の合図を自ら送る手法です。パジャマに着替える、落ち着きのある音楽を流す、仰向け大の字で深く深呼吸をしてみるなど、儀式が習慣化することで、自分で自分のスイッチを作ることにより、脳が自然と寝る時間だど記憶し、入眠がしやすくなります。
▶︎ オレンジの光の活用
一般的にリラックスできるのは色温度の低い色です。暖かみのあるオレンジ色なら心地よい眠りに導いてくれます。メラトニンは暗くなってくる夕方から分泌がはじまり、暗ければ暗いほど分泌されるので、睡眠中は真っ暗にするのが理想です。
▶︎ 良い香りの活用
十分にリラックスをして、副交感神経を優位な状態にするのに高い効果が期待できるのが「ラベンダーの香り」です。ラベンダーは不眠症の治療に使われているほどで、世界各国でさまざまな研究が進められています。「ラベンダーの香りをつけた布団で眠ると、通常に比べて深い睡眠にある時間が長くなる」という報告が近年されているほどです。また最近ではコーヒー豆の香りが睡眠にいい効果与えることが明らかになっています。カフェインの摂取は控えた方が良いので、飲むことはおすすめしませんが、香りを楽しむことはいいようです。「眠れない」を「眠れる」に誘引する好みの香りを見つけることもよいでしょう。
▶︎ 寝る直前のストレッチ
軽いストレッチをお薦めします。ストレッチには動的なものと静的なものがありますが、就寝前は静的ストレッチが望ましいです。静的ストレッチは副交感神経を優位にする動きとなります。例えば布団の上であおむけの状態となり、深呼吸しながら足首をゆっくり手前に曲げ、再び伸ばす動作を1分やってみてください。深呼吸するときは、ゆっくり吐きます。吸うより吐くを長めに、最後までは吐ききることでより効果が期待できます。
白濱龍太郎先生によるまとめ
睡眠と日中のパフォーマンスは表裏一体です。例えば、睡眠不足は集中力に直結します。仕事の生産性、パフォーマンスも左右するでしょう。睡眠不足が続き、知らず知らずに積み重なった心身の疲労は、徐々に体をむしばみ、30代半ばを過ぎると様々な悪影響を与えます。
眠れない理由を知り、やってはいけないことを避け、やるべきことを1つでも実践してみることで、眠れないストレスや不快感から卒業できるかもしれません。眠れないが続くとそれは「不眠症」という疾患になります。改善傾向がみられない場合は専門医や内科医を適切に受診し、一人で抱えている不安を解消することも大切です。